あらすじ

クリスマス・イヴの夜、とある山奥の地方都市で突如天地を揺るがすような大地震が起きた。

その凄まじい地震の影響によって、街は瓦礫の山と化し、多くの人間が死に絶えてしまう。

かろうじて生き残った若者６人は、避難場所を求めてたどり着いた教会で出会う。

彼らはこの非常事態を乗り切るために力を合わせて、他の生き残りを探し始めるが……

チェックポイント！

あまりにも現実主義な作品

一般的なエロゲーは、ライトノベルやアニメのノリに近いものがあるが、本作はサスペンスドラマの風味が強い。

あまり「キャラクターしていない」とでも言おうか。

キャラクターとして特徴付けするための変わった口癖や、服装といった味付けはせず、本当に現実にいそうな人間臭い人物で物語を構成している。

CGのタッチも写実風味

本作の物語や登場人物に合わせるように、そのCGも極めて写実的だ。

陰影を巧みに使い、突如豹変する人間の醜い表情を克明に描写するなど、一般的なエロゲーにおけるCGとはかなり様変わりしている。

また、通常のエロゲーでは画面下側固定で配置されるテキストボックスが、縦横無尽に移動する点など初心者エロゲーマーを戸惑わせるようなギミックを盛り込んでいる。

大災害時の人や社会の変化を描きたい人へ

突如大災害が起き、一部の人間が外部から孤立してしまった時、その一部の人間たちの社会や心理にどういった変化が起きるのか。

頭ではなんとなく想像できるものの、実際に文章にして書いてみろと言われると、リアリティのある描写をするのに中々苦戦する。

本作では、冒頭で起きる大地震の後、避難場所を求めていた若者６人が教会で出会う。

彼らは自分以外の生き残りに出合えたことで安心し、当初は力を合わせて難局を乗り越えようとする。

しかし後に彼らがさらなる生き残りと出会い、その生き残りたちがグループを形成しているのを見ると、一緒だった若者６人もそれぞれの信念の元、別のグループの元へと離れ離れに歩いていく。

結局人間とは「群れる」生き物だということが、本作をプレイしていて如実に実感できる。

哲学者のアリストテレスは「人間は社会的動物である」と言った。

突如大災害が起こって、一部の人間が周りから断絶されると、その生き残った人間の中にさらに小さな社会が生まれるのだ。

そういう意味では、本作は極めてリアリティのある展開をしていると言える。

「学校に避難した人間」と「宗教団体」という二つの社会が本作では登場するが、この二つの社会は対立し、やがて抗争に発展する。

かつての大戦時の歴史の小規模版をそのまま繰り返していると言える。争うこともまた人間の性なのだ。

本作において、この小規模社会の対立がどのような結末を迎えるのか、ぜひとも実際にプレイしてその目で確かめてほしい。

緊急時の社会の変化、豹変する人間の心理など、エロゲー媒体のお家芸とも言える生々しい描写は、作品を創る上で多いに参考になるだろう。

まとめ

いかがだっただろうか。
本作は初心者エロゲーマーにはお勧めしない。

エンターテイメントに特化していない点や、通常のエロゲーとは違うCG、テキストボックスの配置など、戸惑う点が多いからだ。

それに伴い、作品の知名度の点でも「知る人ぞ知る」隠れた名作であるため、プレイ本数が20本を超えたあたりの中級エロゲーマーが新たな境地を開拓するような時にプレイするべき作品だ。

エロゲー初心者が本作からエロゲーライフをスタートさせると、後にプレイする名作になじめなくなる危険性がある。 もちろんエロゲーのプレイは全て自己判断だが、あくまでアドバイスとして参考にしてほしい。

ちなみに本作、エロゲー雑誌である「MEGA STORE (メガストア) 2013年 03月号 」の付録DVDに完全収録されているため、この雑誌の付録として購入すれば大幅に安い値段で入手できる。

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