あらすじ

――家族計画。

それは、各々過酷な運命を抱える者たちが集まり疑似家族を形成し、お互いに守り合ってこの過酷な世の中を何とか渡っていこうという相互扶助計画である。

天涯孤独の主人公、リストラ中年おやじ、中国人の密入国少女、家出娘、自殺願望の女性。

彼らは身を寄せ合い、時に衝突しながらも絆を深めていくが――

チェックポイント！

名作は、どれだけ時が経とうとも色あせない

発売は10年以上前の2001年と、かなり古い作品である。

が、今でもエロゲーマーの間では名作として語り継がれている。まさにエロゲー界の走れメロス（？）とも言える作品だ。

特筆すべきはその完成されたシナリオ。

本作には様々な事情を抱えたキャラクターが出てくるが、そんな痛みを抱えた者同士だからこそ助けになれると納得させられる シーンが多い。

ちなみに余談だが、本作の作者「山田一」の正体はあの名作”CROSS CHANNEL”の作者「田中ロミオ」だという噂がある。
噂というよりも、もはや確定事項だが、エロゲライターの中にはまったく違う傾向の作品を書く際にペンネームを変えることがある。
覚えおくとよいだろう。

”両親と離れて暮らしている”をどう扱うか

実は、ライトノベルには家族をないがしろにしている作品が多い。
主人公の両親が海外で暮らしていたり、あるいは亡くなっているなど。

それはある意味仕方のない傾向でもある。

主に中高生が主役のライトノベルでは、彼らを抑圧する存在である両親は物語を構築する上でしばしば邪魔になるのだ。

例えば、突如空から降ってきた訳アリの少女が、ひょんなことから主人公と一緒に暮らすことになった。ライトノベルではよくある設定である。

そんな時、両親がいれば、簡単にこんな同棲もどきを許すわけがないのだ。

「あなたご両親はどうしたの？」「おうちの人が心配してるわよ？」

こういった台詞が発せられることは容易に想像できる。ライトノベルの天敵である「常識的対応」が物語に介在してきてしまうのだ。

そんな中、この作品は真っ向から家族の在り方を問う。

もちろん、本作の登場人物たちはそれぞれが”他人”なので、本物の家族ではない。しかし、だからこそ”血のつながりがなくても家族になれるか”という本作のテーマが明確に浮き上がってくるのだ。

ライトノベル作家を目指す人に言いたい。

軽々しく主人公の両親を殺したり海外に追いやったりはしないでほしい。もちろん、そうせざるを得ない状況はあったとしても、そこにはそれなりの理由を設定してほしいのだ。

「父親の転勤で主人公も海外で暮らす予定だったが、友人たちと離れたくない一心で両親を説得し、一人暮らしをすることを許可された」
「主人公の母親は難病を抱えており、父親と共に海外の最新医療の元で治療を続けている。そんな中、主人公はしっかり学生生活を送りながら両親の帰りを待ってる」

安易な例を挙げたが、こういった「両親と離れて暮らしている理由」も、うまく本筋の物語と絡められれば、その作品の深さはぐっと増す。
あなたの作品の書き出しは、こんな一人称で始まっていないだろうか

――俺は平凡な高校生。親はとある海外のリゾート地の滞在券１年分が当選し、遊んで暮らしているらしい。まったく勝手なやつらだ。だからこそ俺はきままな一人暮らしが楽しめる訳だが――

はっきり言おう、底の薄さが透けて見える。
「家族計画」をプレイして、”家族とは何か”を、今一度見つめなおそう。

まとめ

最後に、本作は古い作品だが最近リメイクが発売された。

そのタイトルは「家族計画 Re:紡ぐ糸」である。リメイク版では、グラフィックがフルHDになりあらゆる性能が向上している。 だが筆者はあえて2001年版をお勧めしたい。
使い古された言葉だが"古き良き時代"の確かな息遣いが、2001年版には宿っているのだ。

脈々と続いてきた美少女ゲームの歴史。その金字塔たる本作を、ぜひとも当時の空気で感じてほしい。

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