あらすじ

主人公の長瀬渡は、いつも電車で見かける少女、天城蒲乃菜（あまぎほのな）に密かな想いを寄せていた。

そんなある日、彼はとうとう自分の欲望を抑えられず、彼女を廃工場に監禁してしまう。

実はラバーフェチである渡は、蒲乃菜用に自らオーダーメイドしたラバースーツを彼女に着せ、廃工場の地下室に閉じ込める。

おびえる彼女に危害を加えるつもりのない渡は「何もしない。ただ、傍にいて欲しい」と告げる。

何とか彼女の好意を得るため、知恵を絞る渡だったが……。

チェックポイント！

マニアックブランド「13cm」の作品

風変りな作風が多いエロゲーという媒体の中でも、際立ってマニアックな作品を多数発表している「13cm」の作品である。

実は「key」を擁する「ビジュアルアーツ」の傘下のブランドであり、姉妹ブランドとして「130cm」「13cc」「otherwise（解散）」が存在している。

ちなみにブランド名は日本人男性の陰茎の平均値に由来するという。

異色中の異色作

タイトルからいちゃラブ系のストーリーを連想させるが、実際はその真逆のゆがんだ愛の物語だ。

発売は1998年と、本サイトの紹介している作品の中では「傷痕-きずあと-」(1996年発売)に次いで古い作品となっている。

ゴムに対して性的執着を見せる「ラバーフェチ」という、現在でもほとんどその存在を知る者がいないフェティシズムを当時から題材に挙げるあたり、前衛的な姿勢がうかがえる。

「フェティシズム」を書きたい人へ

この記事を読んでいる人の中で、ラバーフェチというフェティシズムの存在を知っていた人がどれだけいるだろうか。
ほとんどいないだろう。

詳細に関して知りたい人はWikipediのこの項目でも見ていただくこととして、ここではフェティシズムをライトノベル作品に持ち込むことについて考えてみよう。

実はライトノベルでフェティストが登場する作品はそんなに珍しくはない。

例えば「文学少女」のヒロイン天野遠子は、小説（物語）を愛するあまりその本文が載っている紙を食べて至福に満たされるという性癖を持っている。

これもある種のフェティシズムと言えるのではないだろうか。すくなくとも「ノーマル」ではないはずだ。

しかし「文学少女」の例も、あくまでキャラクター付けのスパイスとしてフェティシズムが出てくる訳であって、「好き好き大好き！」のようにそれ自体が物語に重大な影響を及ぼすような存在としては描かれていない。

つまり、創作者を目指す人々の大好物「未開拓の地」である。ここは果敢に切り込んでいこう。

実際フェティストと呼ばれる人がそのフェチの対象に対してどういう思考を持っているのかという事を深く知れる機会などそうそうない。

その点、ラバーフェチである主人公の一人称で語られる本作は、フェティシズム描写を学ぶのにこれ以上にないほどうってつけの作品だ。

本作では主人公のゴムに対する強い想いが詳細な内相描写で語られていく。それでいて、こういった特殊な趣向は周りに理解されないだろうと極めて冷静に考えている主人公の葛藤の描写もぬかりない。

さらに、主人公がどういった経緯でラバーフェチになったのかということまで語られており、フェティシズム描写の教本（教ゲー？）といってしまっても過言ではないだろう。

実際フェティシズムを作品のメインに据えるのはかなり難しいが、あえてそこにチャレンジしていく勇敢な作家志望の方がいれば、是非とも本作をプレイしてみよう。

きっと忘れられない体験になるはずだ。

まとめ

いかがだっただろうか。

本記事を書いている時に、ふと思ったことがある。
それは、小説家もある種のフェティストなのではないかということだ。

ライトノベル一冊の文字数は10万文字以上。
実際に小説を書いた人であればわかると思うが、これだけの文章を書き続けるのは並大抵のことではない。まさに「文字フェチ」である。

小説家志望の中で実際に小説を書いた事のある人はほとんどいないそうだ。 そして、ひとつの物語を最初から最後まで完成させたことのある人はさらに少なくなる。

フェティシズムとは、大業を成し遂げるのに必要な「素質」に他ならないのではないだろうか。

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