あらすじ

主人公の浅井京介は、友人や妹たちと面白おかしく日々を過ごす平凡な学園生。しかし彼の裏の顔は、闇の世界で暗躍する「ビジネスマン」でもあった。

そんな裏と表の世界を行き来しつつ日々を過ごしていた彼は、ある日謎の転校生宇佐美ハルと出会う。普段は気だるげでやる気のないダメ人間風の彼女だが、時として鋭い知性を垣間見せていた。

珍妙な存在である彼女に戒心を抱いていた京介に、ある日ハルは自らの目的を告げた。

――魔王を探している。

同じころ、裏のビジネスマンとして仕事をこなしていた京介の元に届いた一通の奇妙なメール。有名な古典を模したと思われる短い文面、その件名は「The Devil」。

それを機に、夜の街に見え隠れし、義父たちの「闇のビジネス」を妨害し始めた「魔王」と名乗る存在。
邪魔者を消すべく義父の命令を受けた京介は「魔王」の炙り出しを始めた。
そんな彼らを挑発するように、次々と引き起こされる事件。裏で糸を引く「魔王」の正体とは。

――私が、ハルよ―
――私が、”魔王だ”

チェックポイント！

準ミステリー風味の、切なく泣かせるハードボイルドエンターテイメント

名作「車輪の国、向日葵の少女」で名をはせた、あかべぇそふとつぅの二大作品の一翼を担うのが、本作「G線上の魔王」だ。

本作は、ヒロインの宇佐美ハルが、過去の因縁から恨みを持つ「魔王」たる存在を主人公の浅井京介と共に追う、ミステリー風味のハードボイルドエンターテイメントである。

本作を盛り上げるBGMのほとんどは、作品名の由来でもある「G線上のアリア」や「アメイジング、グレイズ」等、クラシックの名曲をアレンジしたものとなっている。

泣きゲーに分類され、悲惨な過去を持つ人物たちが数多く登場する。

彼らの多くがその悲惨な過去から人生の何たるかを感じ取り、確固たる信念を持ち合わせている。その信念のぶつかり合いが、本作の熱いドラマを生む。

頭脳派ヒロイン、宇佐美ハル

さて、ヒロインと言えば主人公に守られるお姫様的ポジションというのがこれまでのエンターテイメントの主流だった。

しかしそんなステレオタイプはもう古い、昨今のヒロインは主人公と肩を並べる”戦うヒロイン”である。宇佐美ハルはそれを体現するようなキャラクターだ。

頭脳だけで言えば、主人公をも上回る彼女は守られるどころか魔王を追って走る戦う推理するの大活躍だ。

そんなヒロインには可愛げがない？

心配ご無用、デレるところではしっかりデレるし、物語のクライマックスでは魔王の圧倒的力により否応なく”囚われのお姫様”の状態に陥れられる。

裏社会の覇者、浅井権三

さて、本作を語る上で欠かせないのが京介の”飼い主”浅井権三その人である。

街一帯を根城に構える暴力団、園山組の組長であり絶対的強者だ。それもただ暴力を振るうだけでなく、思いがけない思慮深さをも併せ持った一筋縄ではいかぬ悪党である。

自らの利益とあらば、身内をも道具扱いする悪逆非道の人物だが、物語のラストでは情の存在を見え隠れさせるシーンもある。

ネタバレを避けるために詳しくは語らないが、ライトノベルを書く上で単なる”悪者”の内に収まらない信念を持った”悪役”を描きたいならば、ぜひとも本作で彼の生き様を目に焼き付けておくべきだ。

いくら若年層がターゲットのライトノベルでも、もはや単純な勧善懲悪ものは流行らなくなってきている。

まとめ

さて、本作には犯罪心理を扱う場面が数多く登場するため、ミステリーテイストのライトノベルを書きたいならぜひとも参考にしてほしい。

”魔王”や”浅井権三”といった、ゆるぎない信念と哲学を持った悪党の登場する本作をプレイすることで、キャラクター造形に深い示唆を与えてくれるだろう。

最後に、サブヒロイン美輪椿姫、浅井花音、白鳥水羽の三人をちょっぴり述べておく。 彼女らのルートでは、それぞれ”家族愛”、”才能を与えられた者の運命”、そして”姉妹愛”がテーマになっている。 宇佐美ハルルートと比べると小粒だが、十分に鑑賞に堪えるストーリーとなっている。こちらも注目だ。

最新情報＆更新情報

▲ページトップに戻る