あらすじ

空に浮かぶ浮遊都市『ノーヴァス・アイテル』。

かつてこの国には、貴族の住む上層と一般市民が住む下層が存在していた。

しかし、10年前に起きた大崩落「グラン・フォルテ」によって下層の一部が地盤沈下し、そこには下層よりさらに劣悪な環境である通称”牢獄”が誕生する。

牢獄に住む青年カイムは、ある日仕事で上層から娼館に売られる女性たちを移送中の馬車を迎えに行く。 するとそこには見るも無残な女性たちの殺害現場が広がっていた。

そんな中、唯一生き残った少女「ユースティア」。
背中に羽の生えたこの少女には、その都市の根幹にかかわる秘密が隠されていた――

チェックポイント！

オーガストが送る、本格派のダークファンタジー

本作のメーカー、オーガストはこれまで比較的明るい雰囲気の作品を制作してきた。

しかし本作ではそれまでの作品とは一変した、ハードでダークな作品をリリース。

大きな作風の変化に往来のファンは戸惑ったが、その完成度の高さと感動的なストーリーで、同社の新たな名作として認知される。

べっかんこうの美麗なCGに酔いしれよう

オーガストの看板イラストレーター、べっかんこうをご存じだろうか。

彼は同社の作品の多くでイラストを手掛けており、人気が高い。

特徴的な柔らかい曲線で描かれる美少女イラストは、独特の温かみを感じさせ、登場人物に存在感を与えている。

支配階級側の内情を知りたい人へ

貴族とは何か。
この質問に「明確」に答えられる人は少ないだろう。

多くの人は「政治的な権力を握っている人」といった回答になるのではないだろうか。

もちろん間違ってはいないし、普通の社会生活を送っていく上ではそれくらいの知識でなんの問題もない。

しかし、異世界ファンタジーのライトノベルを書きたい人にとっては、貴族に関する知識はことさら重要になってくる。

「なんかえらい人」程度の認識で貴族キャラを描くと、見るも無残な作品が出来上がることだろう。

本作「穢翼のユースティア」では、王宮内での会議の様子や、貴族の人間関係的しがらみが細かく描写されているため、ファンタジー作品を書く上では非常に参考になる。

素人が書くファンタジー作品でありがちな、「横柄で横暴な支配者」という一面的な描写でのみ貴族を表現すれば、その作品はたちまちチープな物に成り下がってしまう。 ちゃんと支配階級側の葛藤も描いてこそ作品に深みが増すだろう。

また、本作では下層階級の武装蜂起（支配側に対して、被支配側が武力でもって反乱を起こすこと）や、貴族同士の争いによる政変の様子、貴族の従事者同士の腹の探りあい、正教会と王族との関係、王宮護衛騎士団のシステム などなど、資料を探しても中々具体的にイメージできない痒いところまで手が届く大変ありがたい創りになっている。
本作のシステムとして、バックログでそのセリフをクリックすると簡単にジャンプできるようになっているので、プレイ中にあなたが参考にしたいシーンに遭遇したら、そのシーンの冒頭まで飛んでセーブして資料集にするとよい。

もちろん作品の内容も多いに楽しめること間違いなしだ。

本サイトの作品紹介の方針、面白くてためになる、に間違いなく該当する。むしろこれまで紹介してきた作品のなかでも上位に入るほどのできだ。

大いに楽しんで、大いに吸収しよう！

まとめ

いかがだっただろうか。

ちなみに本作、トゥルーエンドのラストに賛否両論沸いている。
ネタバレはしないが、確かに人によってはやるせない気分になるかもしれない。

ライトノベルを書いているあなたなら、作品の終着点をどうするか一度は悩んだことがあるだろう。 綺麗さっぱり終わらすか、それとも余韻を残すべきか、あるいは謎めいたラストにするか。

はっきり言って正解はない。 どんな終わらせ方にしろ、納得しない人はいるし、それをいちいち気にしていたら作品など作れない。
むしろ本作のように、ラストシーンで物議を醸すような作品が作れればそれで成功なのではないだろうか。

絶賛にしろ、酷評にしろ、それは注目を浴びたことの証左なのだから。

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