あらすじ

須々木心一は平凡な生活を送る学園生だった。しかしある日学園の屋上で不思議な少女、アオイに唐突にキスを迫られる。

その場は幼馴染みの美雪の乱入により未遂に終わったが、アオイはその後も不可思議な言動をことあるごとに見せる。

友達との付き合い方がわからないアオイのため、心一は美雪に協力を仰いで、3人で“友達”として絆を深めようとするが――

チェックポイント！

ニトロプラスが生み出す、新たな意欲作

「 斬魔大聖デモンベイン」「沙耶の唄」「装甲悪鬼村正」と、数々の名作を生み出してきたエロゲメーカーの大御所、ニトロプラス。

本作は、常に新しい挑戦に意欲を燃やす同メーカーの新たな意欲作である。

ライターには、もはや同メーカーのエースと言える「下倉バイオ」を起用。

主題歌には、エロゲーとしては珍しく男性ボーカルで元「19」の「岩瀬敬吾」、エンディングにはもはや説明不要の歌姫「いとうかなこ」等を起用。

この豪華すぎるメンバーからも、その本気度がうかがえる。

既存のエロゲーという概念を根底からぶっ壊す作品

「エロゲー」とは何だろうか。

本作をプレイすると、このような哲学的な問いにぶち当たる。

プレイヤーは主人公を通して複数のルートのそれぞれのヒロインと恋愛する。そしてその後に攻略できるトゥルールートを攻略し、真ヒロインとめでたくエンディングを迎えることによって、ひとつの作品を終える。

エロゲーの基本構成とはおおむねこのようなものだ。

本作はその固定概念を「根底から」ぶち壊す作品である。

下手をすれば、プレイヤーからクレームが出かねないほどのとんでもないシステムを構築し、まったく新しいエロゲー体験を世の中に送り出した。

この作品紹介ではネタバレは一切しない。理屈抜きでとにかくプレイしてほしい作品である。

自らの殻をやぶりたい人へ

ライトノベル作家を目指す人に問いたい。あなたは「固定概念」に囚われていないかと。

世の中のあらゆる発明は、世界中の人々が「無理だ」と決めつけていたことを大真面目に挑戦した馬鹿者によって開かれる。

飛行機を発明した「ライト兄弟」、電話機を発明した「グラハム・ベル」、人々とのつながり方を変えた「Facebook」の創始者「マーク・ザッカーバーグ」。

これらの人々に「常識にとらわれる」という概念など一切ない。

大げさな話だろうか。

しかし「ライトノベル」という媒体もある種の新しい発明と言えるのだ。 ライトノベルの登場は1970年代と言われているが、それまでの小説にはライトノベルの特徴とされるアニメ調の挿絵や、マンガのような展開をするものはほとんどなかった。

筆者が高校時代に初めてライトノベルを読んだ時は「こんな小説ってありなのか？　いや、そもそもこれって小説と言えるのか？」と衝撃を受けた。 まるでアニメや漫画を小説にしたような展開。それまで真面目な一般文芸小説の存在しか知らなかった筆者の世界がひっくり返った瞬間である。

本作「君と彼女と彼女の恋。」をプレイしたときも、同等の衝撃を受けた。

はっきりいうが、ライトノベルを書く上での物語の構成や、キャラクター造形など、技術的な事柄に関しては本作から学べることは少ない。 本作をプレイする意義とは、もっと創作の根底にあるもの「固定概念」をぶち壊してくれることなのである。

ライトノベルにおいても、現在様々な作家が試行錯誤して新しい表現方法を模索している。 顔文字を入れたり、突飛なフォントや字体、さらには文字の並びで形を作るなど。

某巨大掲示板ではそれらを揶揄してバカにしている風潮があるが、それを笑う奴らが凡人なのである。

新しい挑戦というのは常に成功する訳ではない。また、最初は受け入れられなくても、徐々に時代が追いついてくることもある。 クリエイターとは、良くも悪くも先駆者である苦悩を生涯持ち続けることになる。 一度成功しても、批判を恐れて新しいことに挑戦しなくなった者は、「表現者としての死」を迎えたのと同じである。俗にいう「一発屋」だ。
本作の何が新しいのかというのは、ネタバレになるため、非常に心苦しいがここでは説明できない。 ネタバレが目的で読んでいただいている方は、申し訳ないが別のサイトに行っていただきたい。

ライトノベル作家を目指してここに来てくれている方は、是非とも事前情報を一切頭に入れずにまっさらな状態でこの「固定概念がぶっ壊される衝撃」を体験してほしい。 創作者を目指すあなたにとって、とても有益な体験になるはずだ。

まとめ

いかがだっただろうか。

このページは作品の内容にほとんど触れなかったため、説得力がないものになったかもしれない。 しかしだ。それでも、どうしても筆者はライトノベル作家を目指すあなたにこの作品を、「事前情報なし」でプレイしてほしい。

筆者はエロゲーをプレイし始めて3年たつが、最近はやはりプレイ本数が少なかった時に出合った「車輪の国、向日葵の少女」や「マブラヴオルタネイティブ」のような衝撃を与えてくれる作品に出合う確率が徐々に低くなってきた。

だが、本作をプレイして久々にエロゲー初心者だったころの衝撃に再び巡り会えた。これだからエロゲーはやめられないのだ。 最後に一つだけ、本作は攻略サイトを見ても意味がない。 いや、意味がまったくないことはないが、通常のエロゲーのように役には立たない。

なぜなら、それぞれのプレイヤーが購入する「君と彼女と彼女の恋。」一本一本が、あなただけの「君と彼女と彼女の恋。」だからだ。 是非とも本作をプレイして、この意味を解明してほしい。

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