加奈〜いもうと〜


-今日、海を見た。もう怖くない。-
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あらすじ

主人公、藤堂隆道(とうどう たかみち)には妹がいる。

彼女の名は、藤堂加奈(とうどう かな)。

生まれつき腎臓が弱く、長くはないと言われている彼女。

そんなハンデを背負っているせいか、両親の愛情を一身に受ける彼女を疎ましく思っていた隆道だったが、とある事件がきっかけで、
彼女を一生守り抜く事を決意する。

それからというもの、大切な時間を共に過ごし、着実に仲を深めていく二人。

しかし、病魔の手は確実に加奈の体を蝕んでいた―


チェックポイント!

山田一の代表作の一つ

「家族計画」「CROSS CHANNEL」で有名な山田一(=田中ロミオ)の代表作の一つである。

初出は1999年。15年前の作品である。

発売当初はヒット作とは呼べなかったものの、感動的なシナリオがじわじわと注目を集め、2004年にリメイク版「加奈…おかえり?」が発売されたほか PSPへのコンシューマー版も発売されている。


直球ど真ん中ストレートで泣かせにくる作品

「病弱な妹と、彼女を献身的に支える兄との交流」という、今ではそこら中にあふれていそうな題材で描かれた本作のシナリオは、まさに「直球ストレート」と言えるだろう。

設定自体がすでに泣き要素を十分にはらんでいるが、ストーリーも下手な変化球は加えずに、王道シナリオで泣かせにくる。

悪く言えば「ひねりがない」とも言えるが、やたら斜に構えた作品が多い昨今の中で、このような作品をプレイすることは、新鮮な感動を与えてくれることだろう。


「死にゆく人物」を書きたい人へ

あなたは死ぬことが怖いだろうか。

筆者は幸いにも健康体に生まれ、これまで大病も患ったことがないので、「死ぬのが怖い」という感情をいまいち理解できなかった。

例えば「死ぬまでの病の苦しみ」や、「事故で死ぬ場合に想定されるであろう肉体的苦痛」は怖いが、「死」そのものが怖いかと言われれば「具体的にイメージできない」というのが正直なところだった。本作をプレイするまでは。

本作のヒロイン、加奈は「死にゆく人間」な訳だが、そんな彼女が病を抱えて生きる中で自身の中で起こる葛藤にどう向き合っていくのか。

本作ではそんな「死に直面した人物の心理描写」が極めて優れている。

正直に言ってしまえば、シナリオ自体にそれほど特筆するべき点はない。「泣けるが、それまで」とバッサリ斬る人もいるだろう。

だが、ことヒロインの心理描写にだけ焦点を置けば、その表現力はトッププロのそれである。

ライトノベルにおける「死にゆく人物」を描いた作品と言えば「半分の月がのぼる空」だろう。

この作品でも、不治の病に侵された少女と、普通の少年である主人公との交流が描かれる。

この作品はライトノベルとしてはかなり大人し目のストーリーであり、「売れないだろう」という覚悟の元書かれたらしいが、予想に反して漫画化、アニメ化、ドラマ化とクロスメディア展開されるほどのヒット作となった。

「不治の病物」ともいうべき作品群を書く上で重要視されるのが、登場人物の生死観である。

素人の作品で良くあるのが、登場人物が自らの死を悟った瞬間に、残った命で他者や世界のために精一杯尽くす―まるで「天使のような人間」になる―パターンだ。

死を受け入れた人間が、ある程度達観するのはよくあることらしいが、だからといって自らの全てを犠牲にして、周りに尽くす「だけ」の人間になることはありえない。

必ず「死にたくない」「なぜ自分だけが死ななければならないのか」といって葛藤が心の内に沸くものである。

本作、「加奈〜いもうと〜」でも、そういった部分はしっかりと描かれている。

「加奈は世の中の穢れにまったく身を浸していない潔白の天使ではない」といった趣旨の主人公の独白が挟まれ、ハッとさせられる。

「加奈〜いもうと〜」をプレイして、「死にゆく人物」を書いてみよう。

まとめ

いかがだっただろうか。
最後に物語で「死」を扱うことについて考えてみる。

登場人物が死ぬことで感動を誘う方法はしばしばみられるが、そこにいたるまでの紆余曲折がなければただの安っぽい感動の押し売りになりかねない。 俗に言う「お涙ちょうだい」だ。

物語を創る者にとって、これほど屈辱的な言葉はない。 しかし、現実に「お涙ちょうだい」な作品は溢れかえっている。

あなたが感動ストーリーを書く時に、こういった評価をされないように、「加奈〜いもうと〜」のようなしっかりとしたストーリーと、生死観を併せ持った作品を味わって、腹に落とし込んでおこう。

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