あらすじ

主人公はさえない浪人生。

同人で絵を描き、即売会で販売する活動をしていたが人気は鳴かず飛ばず。

そんな時、即売会で出会った一人の少女に、まったく売れなかった同人本を購入され、さらにサインまで求められた。

初めてのことに混乱する主人公だったが、彼女の正体はエロゲーメーカーの社員だった。

彼女に絵を気に入られた主人公は、やがて彼女の所属するエロゲー会社に勧誘され、原画家として作品を作り始めるが……

チェックポイント！

今は亡き、エロゲーメーカーの秀作

本作、「らくえん〜あいかわらずなぼく。の場合〜」は、これまで紹介してきた作品の中ではガクッと知名度が落ちるだろう。

実際本作の売上は振るわず、メーカーはすでに倒産してしまっている。

しかし、某巨大掲示板では「2004年ベストエロゲー投票」で得票３位・配点４位にランクインを果たした。

まさに、玄人好みの作品である。

ありそうでなかった、エロゲーをテーマにしたエロゲー

この作品が発表された2004年当時、エロゲーを創る人たちをテーマにした作品は、ありそうでなかった。

恐らく現在もほとんどないだろう。

本作で描写されるエロゲーの作り手たちの血のにじむような努力や、修羅場で血を吐きながらも突き進む姿勢からは、創作者としての魂を感じ取ることができる。

堕落物が書きたい人へ

「堕落」をテーマにした作品は、数こそ少ないものの、一定のファンを獲得しているジャンルである。

堕落とはなんだろうか。

例えば大学時代、授業に出ずに一日中彼女とセックスにふける。はたまた、職に就かず、脱ぎ散らかした洋服や食べかけのお菓子が散乱した部屋で惰眠をむさぼる。

字面だけ見れば、それは「悪」に見えるかもしれない。

しかし、人の一生の中で誰もが一度は経験することなのではないだろうか。

例えば筆者はプロフィールページで、大学時代の最後の１年間をひたすらエロゲーをプレイすることに費やしたと書いた。これも一種の「堕落」だ。

「堕落」には、不思議と人々をひきつける魔力がある。

「堕落する準備はOK?」の衝撃のキャッチフレーズと共に登場した本作「らくえん〜あいかわらずなぼく。の場合〜」には、根底に生ぬるい堕落が流れている。

エロゲー会社で働く本作の登場人物は、仕事場でダンボールを敷いて寝るは、仕事中に酒は飲むは、仕事中にエロ談義に花を咲かせるはのやりたい放題だ。

実際にエロゲーメーカーの内情がこうなのかは分からないが、本作で描写されるエロゲーメーカーの社員の仕事ぶりは、一般的な企業に勤める人と比べれば「堕落」そのものである。

ラノベ作家を目指すあなたが「堕落」を書くつもりはなくとも、この何とも言えない「堕落」の雰囲気は一度味わってみるべきだ。

もしかすると、この説明不能の魅力に囚われて、いつかあなたは「堕落物」を書き始めるかもしれない。

まとめ

いかがだっただろうか。

本作はこれでもかとパロディーネタを投入しており、玄人仕様の側面が強い。
物語の内容も、一般プレイヤーを楽しませるというよりは、独特の雰囲気で人を虜にさせるという作りになっている。
エロゲー中級〜上級者向けの作品と言えるだろう。

もしあなたが大学生だったら、もしかしたら本作に深い共感を覚えるかもしれない。
もっとも、それはあなたが日夜研究にいそしんだり、クラブ活動に熱中しているような、いわゆる「リア充大学生」ではないということが大前提ではあるけれど。

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