あらすじ

不死なる王の支配する世界で、最底辺の奴隷としての生活を送っていた少女。

人間ですらない醜い化け物の主人から日々過酷な凌辱を受けて暮らしていた彼女は、ある日ひょんなことから不死の肉体となってしまう。

その日から、彼女は不死の肉体を持つ者として珍しがられ、町の人々から凄惨な拷問を受けることになる。

自殺することも叶わぬ不死の身体など手放したかった彼女は、ゾワボと名乗る青年から「王を殺せば不死身の肉体ではなくなる」とそそのかされ、葛藤の末王の殺害を断行する。
しかし試みはあえなく失敗し、国中から追われる身となった彼女は、王の殺害をそそのかした張本人のゾワボと共に国外逃亡を図る。

果たしてゾワボとは何者なのか、そして彼女に待ち受ける運命とは。

チェックポイント！

和泉万夜の2大名作の一翼を担う作品

本サイトでも度々紹介して来たベテランシナリオライター、和泉万夜氏の作品である。

100作近い作品のシナリオを手掛けてきた氏の中でも、代表作とされるのが「EXTRAVAGANZA〜蟲愛でる少女〜」そして本作「無限煉姦〜恥辱にまみれし不死姫の輪舞〜」である。

実は筆者は本作のシナリオライターを知らずにプレイしていたが、物語の途中から挿入される目をそむけたくなるような美少女拷問シーンを目の当たりにして「もしかしたら」と調べた結果、この事実を知った。

本作でもかなりのハードコア拷問がいくつも出てくるため、要注意である。

感動シナリオにも注目

さて、本作も和泉氏の18番、美少女拷問シーンが如何なく挿入されるが、それだけでは氏の代表作と呼ばれることはなかっただろう。

そう、本作は「シナリオゲー」といって差し支えないほど優れた物語展開が魅力なのだ。

本作のパッケージデザインや、HP、各種広告宣伝では凌辱抜きゲーの印象しか抱かないだろうが、嬉しい誤算ともいうべきか、本作はヒロインの目覚ましい成長を描く王道泣きゲーである。

特に、物語の核心部分が明かされる第4章では驚愕の事実に驚かされ、そして物語のラストで哀しみの連鎖を断ち切るためにヒロインが取った行動には感涙を禁じ得ない。

本作のラストがハッピーエンドだと感じるかどうかは、プレイヤー個々の人生観に左右されそうだが、是非ともプレイする価値のある作品であることは間違いない。

”逃亡劇”を書きたい人へ

本作は、”あらすじ”の項目でも書いたように、王の殺害に失敗して追われる身となったヒロインの「逃亡劇」である。
それに加え、ヒロインは不老不死の肉体を持っている故にいくつもの”時代”を駆け巡る作品となっている。

氏のもう一つの代表作「EXTRAVAGANZA〜蟲愛でる少女〜」でも、作中時間を15年間と長くとっていることから、これは和泉氏の作品の特徴の一つと言えるかもしれない。

ライトノベルで全篇を通して「逃亡劇」を繰り広げる作品はあまり聞かないが、長編シリーズの中で一時的に終われる身となる展開は様々な作品で定番である。
いつどこで現れるかもわからない敵に追われる緊張感、追手に発見され追いつめられての戦闘シーンなど、スリリングな展開を描きやすい「逃亡劇」は読者に対する訴求力は強い。

しかしながら逆に描写が甘ければ「そんな隠れ方で逃げおおせられるわけない」「追手の索敵方法が間抜けすぎて笑える」などの手痛いツッコミにさらされる危険性も高い。

さて、本作の面白いところは、逃亡劇でありながらヒロインの成長に従って逃げ方が変わるところである。

逃亡自体は第2章から始まるが、この時点ではまだか弱いヒロインは、とある城の城主にかくまってもらうことで敵から身を隠す。
城内で戦闘が始まっても、怯えているだけで加勢などできるべくもない状態であった。
しかし第3章からヒロインは大きく成長を果たし、追手を自らの手で撃退できるまでになる。
誰かから守られるのではなく自ら戦うようになったことで、死の淵まで追いつめられる展開にもなるが、ヒロインは何とかピンチを脱するのである。

4章からは何とヒロインは追手に対して待ち受けるのではなく、こちら側から索敵して殺すことを生業にするまでに強くなる。

本作の感動ポイントの一つは1章では虐められる虫けら同然であったヒロインが、物語を通して心身共に力強く成長することである。
そして、彼女が数多の時代を生き抜き、数多の困難を乗り越え、一人の人間として成長してきたのは、物語のラストで「ある過酷な決断」をさせるためだったことが「とある人物」から明かされる。
彼女が葛藤の末。自らその決断を下し”始まりの場所”へ旅立って行ったシーンでは、筆者は筆舌に尽くしがたい感情に身を震わせた。

全篇を通してプレイヤーを楽しませ、そしてそのすべてのシーンがラストに結実する。まさに”物語とはかくあらん”と言わずにはいられない作品であった。
全てのクリエイター志望たちに熱く推薦する。

まとめ

いかがだっただろうか。

最後に、本作のBGMに関して記しておこう。
シナリオゲーとはいえ、ハードな展開に相応しくおどろおどろしいBGMが並ぶ本作。
しかし、一曲だけ筆者の心を打つ名曲があった。

曲名は「Golden Slumber」。

いわゆる「感動シーン」で流れる曲なのだが、筆者が今までプレイしてきた数多の泣きゲーのBGMの中でもトップレベルに美しい曲であった。
残念ながらYou Tubeを捜しても見つけることができなかったのでリンクを貼ることはできないが、本作をプレイする際は是非とも楽しみにしていてほしい。

メロディを知らなくとも、曲が流れた瞬間「これか」とわかるはずだ。

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