あらすじ

ミッションスクールである欧美学園、その間もなく廃部が決まっている「第二文芸部」に所属する４人は、最後の思い出にと学園祭でのライブを企画する。

メンバーのほとんどは楽器をまったく触ったことのない素人であったが、人気インディーズバンドのメンバーである同級生の指導のもと猛特訓を行い、ライブを成功させる。

最高の思い出と共にバンドは解散かと思われたが、学園祭ライブ後に出演したライブイベントがネット配信されるなどで俄かに人気を集め、名古屋のライブハウスから4人に出演依頼の声がかかる。

悩んだ末、オンボロトラックでライブ会場に出発した4人。

やがて彼らのバンドはネットを中心とした静かな盛り上がりを見せ、名古屋が目的地だった彼らの旅は段々と全国ツアーの様相を呈して来て……？

チェックポイント！

ロードムービーエロゲー

本作は、主人公を含む４人で結成されたバンドが日本各地で音楽活動を行うというロードムービー風エロゲーだ。

現代日本が舞台で、実在する観光地が出てくるため、旅行が好きな人は多いに楽しめるかもしれない。

ヒロインごとの攻略ルートで旅の行き先が変わるという気の利いた使用になっており、プレイヤーを飽きさせない。

どうしようもなく現実を突きつけられる

さて、本作のあらすじや作品のパッケージデザインを見ると、主人公たちの楽し気なバンド活動ストーリーばかりが強調されているが、物語の後半ではどうしようもない現実を突き付けてくる展開になる。

「ここまで重い話だったのか……」と絶句したプレイヤーも数多くいたであろう。

その感覚は、本作のシナリオライターから「世の中は甘くない」というメッセージを突き付けられているかのようだった。

また、メインヒロインにのみ明確なバッドルートが実装されており、そのストーリーの救いの無さたるや、プレイヤーを絶望のどん底に突き落とすが如くである。

覚悟をもってプレイされたし。

”ロードムービー風ラノベ”を書きたい人へ

登場人物たちが各地を旅してトラブルに巻き込まれるというストーリーのラノベは結構ある。

有名所だけでも「狼と香辛料」「キノの旅」などが挙げられるが、これらはいずれも異世界ファンタジーである。

恐らく筆者が知らないだけで、現実世界が舞台のロードムービー風ラノベも存在するであろうが、先述した作品ほどの知名度はないのではないだろうか。


このジャンルの作品を書くには特殊な環境が必要だと思われる。
つまり「旅が好き」あるいは、「仕事がら、全国各地に出張に行くことが多い」などの環境である。

作家志望者はえてして頭でっかちになりがちで、現地取材を行うよりもネットで調べたことで満足してしまうことが多い。 しかしながら実際に現地に出向き、その場の空気を肌で感じることよりも有益な取材などありえない。

筆者が大学生のころに先生から聞かされたこんな話がある。
当時話題になり映画化もされたダン・ブラウン氏の「天使と悪魔」という小説で、主人公が敵から追われてバチカンの町を逃げ回るというシーンがある。

バチカンの地理に詳しかったその先生いわく、「天使と悪魔」で描写された主人公の逃走ルートは実際の地理的に走破不可能とのことであった。

ダン・ブラウン氏がこれを承知の上であえてエンターテイメント性を優先したのか、それともただの取材不足だったのかは不明だ。

しかし、実在する都市には必ず居住者がいるため、生半可な知識でその舞台について描写すればこういった手痛い指摘を受ける可能性が高い。

ベストセラー作家の東野圭吾氏も、大ヒットとなった小説「新参者」を執筆した際は編集者と共に作品の舞台となった人形町を歩いたとのことだ。

もし作家志望の皆様が実在する都市を舞台に作品を執筆する際は、是非とも現地に赴いて自分の足でその土地を踏みしめてみることをお勧めする。
そうすることで作品のリアリティが増すだけでなく、現地で気づいたことや出会った人々との会話などから新しいアイディアを得られることも期待できる。

「キラ☆キラ」をプレイして、”ロードムービー風ラノベ”を書いてみよう。

まとめ

いかがだっただろうか。

余談だが、エロゲー界には色々と「いわくつき」の作品が存在するが、その中の一作である「暗い部屋」のシナリオも、本作のライター瀬戸口廉也氏が手掛けている。
「暗い部屋」は、諸事情で出版停止となった同名小説をソフトウェア化して発売されたエロゲーだ。

本作の感想をネットで調べたところ、どうやら「きつい」らしい。
「きつい」では内容が全く分からないが、あまりに大き過ぎる衝撃を受けた人間は逆にその物事に関して多くを語らなくなるとも言われている。

精神力に自信がある人は、プレイしてみてはいかがだろう。

また、氏は唐辺葉介名義で小説家としても活動しており、多数の著作がある。
「ドッペルゲンガーの恋人」や「死体泥棒」などは、読書好きな人であれば聞いたことがあるかもしれない。

作家志望者であればなおさらお勧めだ。

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