【WHITE ALBUM2】

-あたしが、先だった・・・先だったんだ-

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あらすじ

2007年秋、東京都。

峰城大付属高校に通う3年生の北原春希。彼は高校時代最後の思い出を作るべく、軽音楽同好会へ加入するが、バンドは痴情のもつれから崩壊の危機に瀕していた。

学園祭のバンドを成功させるため、春木はメンバー集めを開始した。そんな時、彼はふとした偶然で屋上で歌っていた学園のアイドル小木曽雪菜を発見する。

更に、クラスの問題児にしてピアノの天才、冬馬かずさををメンバーに迎える。バラバラだった3人は寝る間も惜しんで励んだ練習の末、学園祭で大成功を修めることができた。

それから、いつまでも3人一緒にいることを誓った彼ら。そう、いつまでも3人一緒でいられると思っていた――


チェックポイント!

”胃に穴が空く”と言わしめた、切なさ全開の冬の物語

美しくもどこかもの悲しいBGMと共に開始する、本作「WHITE ALBUM2」は、三角関係を描いた名作だ。

圧倒的クオリティのサウンドと、他の追随を許さないずば抜けた筆力をもって描かれるこの物語に一たび身を浸せば、プレイヤーの胸は筆舌に尽くしがたい感情で埋め尽くされるだろう。

――切なさ。圧倒的切なさである。


執筆を担当したエロゲー界きっての実力者、丸戸史明が語る本作のテーマは「幸せの向こう側」。
PS VITAに移植された際のサブタイトルともなっているこの言葉の意味とは、「選ばれなかった者のその後も描く」事だ。

エロゲーやライトノベルにおいて、複数の女の子が主人公を取り合う設定が多いのはこれまでに何度も述べた。

そして、各ルートで誰か一人を選んだ主人公はヒロインと結ばれて幸せになる――だが、果たして選ばれなかった方はどうなるのか?

この選ばれなかった者のその後を描く作品はあまり多くない。なぜなら、それをするとどうしても話が重くなりがちで、もろ手を挙げてハッピーエンドという訳にはいかなくなるからだ。

本作はあえてその「選ばれなかった者のその後」まで描くことで、胸がはちきれんばかりの切なさをはらんだストーリーを作り上げることに成功した。


持つ者、小木曽雪菜

この作品は、三角関係というだけあって、境遇も正確も対照的な二人のヒロインを比較することで深く考察できる。

まずは、小木曽雪菜を紹介しよう。

彼女は高校時代よりその美貌から、学園のヒロインとして圧倒的人気を得ていた。

大学、そして社会人と進む中でもその美貌は否応なく周囲の注目を集めていく。

また、家族にも恵まれており、両親に愛され、生意気だがカワイイ弟の小木曽孝宏と幸せに暮らしている。

彼女の周りの環境は非常に恵まれているのである。

持たざる者、冬馬かずさ

対して、冬馬かずさの外部環境は劣悪である。

美貌だけは雪菜に負けず劣らずだが、正確は怠惰で傍若無人、人当りも悪い。一言で言えば「コミュ障」である。

また、世界的なピアニストである母親の冬馬曜子は仕事でヨーロッパに在住しており、かずさは豪邸で一人で暮らしている。

「かずさはピアノしか知らない」

とある場面での春希のセリフだが、彼女の世界はピアノを通してしか外界とつながっていないのである。

不倶戴天の敵でありながら、大親友のヒロイン二人

さて、本作では雪菜とかずさは親友でありながら春希を巡って争うライバルとなる。
この”対決”は、安っぽいエロゲーやライトノベルのように軽くは扱われない。

自分の本心をほとんど表に出さないかずさと、大親友を傷つけたくない雪菜。

その二人が各々の胸の内に葛藤を抱えながらも、抗いがたい恋の熱情に突き動かされる様が、長い長いストーリーを通して描かれていく。

それゆえに、春希がどちらか一方を選んだ瞬間の選ばれなかったヒロインの心情をおもんばかると、プレイヤーの胸のうちには激しい痛みが伴う。

「胃に穴が空く」とはこのことである。

まとめ

最後に、この作品には紹介した二人以外にも杉浦小春、和泉千晶、風岡麻理の三人のサブヒロインがいる。

サブヒロインといっても、どのキャラクターも一切手の抜かれていない個性的かつ魅力的な女性ばかりだ。

あえてここには紹介しないが、当然本作には彼女らのルートもある。人によっては正ヒロイン二人のルートよりも感動的なストーリーと感じることもあるだろう。

実際に筆者も、杉浦小春ルートの思いがけないラストでは心打たれたものである。
正統派恋愛物のライトノベルを書こうとするならば、まず本作をプレイしていなければならない。
自作を見る目がさらに厳しくなり、妥協がなくなること請け合いであろう。



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