あらすじ

少女、夙川恵璃（しゅくがわめぐり）は、不治の病「桜紋秒」を患っていた。

胸に桜の花びらのような痣ができるこの病は、ひとたび発症すれば患者は発作による堪えがたい苦痛の末命を落とす。

助かる方法は心臓移植のみ。

恵璃の両親は恵璃を助けるため、デザイナーベイビーとして妹の璃亜（りあ）をつくった。

恵璃の遺伝子に完璧に適合する心臓の提供者として――

チェックポイント！

あかべぇそふと3が贈る”命”の物語

「車輪」や「G線」等の名作を生み出した「あかべぇそふとつぅ」の系列である「あかべぇそふとすりぃ」から発売された本作。

最近頭角を現してきて、筆者も注目している同社所属のライター「中島大河」の作品である。

後に彼が一流のライターとなった時、きっと本作は彼のターニングポイントだったと言われるだろう。

ミドルプライスらしく、的を絞った作品

本作のプレイ時間はおよそ10時間とされており、いわゆる「ミドルプライス」と言われる中編の作品である。

尺の短さに対するライターの割り切りが感じられ、本作では全篇を通してヒロインと主人公の家族に的を絞った展開が繰り広げられる。

それゆえに彼らの行動範囲も家と隣町までと極めて狭い（これは病による制約ではない）。

世界観の広がりを捨て、徹底して登場人物たちの心理をクローズアップした本作は、昨今の詰め込み気味のエロゲーとは一線を画している。

また、余談だが本作タイトルの読みは「せいめいのスペア」ではなく「いのちのスペア」である。

"メッセージの伝え方"を学びたい人へ

作家志望の皆さんは、「あなたは何のためにその作品を書いたのか」という質問をされたとして、即答できるだろうか。

しばしば作品には「テーマ」が必要であると言われるが、このテーマというのは分かりやすく言いかえてしまえば「作品を通して相手に伝えたいこと」である。

時々、「テーマなんて必要ない、面白ければそれで良いんだ」というクリエイター（非プロ）を見かけるが、大抵の場合そんな作り手が生み出す作品の質はお察しである。

テーマがなければ作品の軸がぶれて、最終的には方向性を見失って物語が破たんしてしまうことは言うまでもない。

本作「生命のスペア」をプレイしていると、ストーリーの端々からライターの強いメッセージがビシビシと飛んでくる。

はっきり言ってこの作品、「桜紋病」という病の医学的な説明がほとんどないことや、心臓提供に対する倫理観や法規制が現実世界とあまりにもかけ離れていることなどツッコミどころは多々ある。
そういう所が気になって、物語に没頭できない人も多々いるであろうことは容易に推測できる。
この作品を楽しむには、そういった所にあえて目を瞑る「積極的にぶさ」が必要である。

恐らくライターの中島氏も、これらのツッコミが入ることは予想していたであろうが、それでも彼は「どうしても伝えたい何か」を優先して本作を作ったに違いない。

野球のピッチャーで言えば、多少のコントロールを犠牲にしてでも剛速球を投げることにステータスを全振りしたのだ。

クリエイターも、読み手も様々なスタンスの人がいる。

細部の詰めを徹底的に行ってこそ作品だと言う人もいれば、面白ければ多少のアラは目を瞑るという人もいる。

最もこれはプロレベルの領域の話であって、例えば江戸時代を描いた作品に何の説明もなくスマートフォンが出てきたりしたら、それはディティール以前の問題である。

「生命のスペア」をプレイして、”メッセージの伝え方”を学んでみよう。

まとめ

いかがだっただろうか。

最後に本作の公式サイトにも掲載されている忠告を一つ。
本作の主題歌である「Liblume」の2番目の歌詞は物語のラストの壮絶なネタバレであるため、プレイ後の視聴を強く推奨する。

逆に言えば、これを聞けば本作の結末が大体分かるので、それを目的にあえて聞いてみるのも一興だ。

最新情報＆更新情報

▲ページトップに戻る

ホーム　|　作品紹介　|　コラム　|　リンクサイト　|　サイトマップ（近日公開）

Copyright (C) 2014 エロゲーをプレイして、ライトノベルを書こう！All Rights Reserved.　design by tempnate