あらすじ

その日、一人の少女の運命は大きく変わってしまった。

両親との楽しいドライブ中、突如「蟲使い」の煉悟に襲われ、車は炎上。両親共に死亡してしまう。

一人生き残ってしまった少女―櫻井 夢美（さくらい ゆめみ）は、煉悟から強制的に「蟲の苗床」として廃屋に監禁される。

そして、壮絶な苦痛の果てに少女は蟲を産んだ――

その中の一匹、とても弱弱しい存在に見えたその蟲は、獣魔蟲という伝説の中にのみ存在するとされる蟲だった。

チェックポイント！

ゲテモノ作品の皮をかぶった、本格成長物語

凌辱や拷問といったアンダーグラウンドな作品を数多く世に送り出しているエロゲーメーカー「ブラックサイク」から発売された本作。

今回も「蟲」という単語の入ったタイトルや、パッケージのイラストからゲテモノ作品だと判断される向きが強かった。

しかし、実際にプレイしてみると、かなり骨太な少女の成長物語だった。

普通の少女として暮らしていた夢美が、理不尽な運命に翻弄されながらも強くたくましく困難を乗り越えていくストーリーは、プレイヤーの心に確かな何かを残していく。

ただし、やはり拷問多し

ゲテモノだけの作品ではないのは確かだが、人を選ぶという点は認めなければならない。

物語のバッドエンド等では、ヒロインたちが凄惨な拷問・凌辱を受けた末に殺されるという展開が少なくない。

一例を挙げると、巨大企業の社長に要求を飲ませるため、蟲使いの青年がその社長令嬢を誘拐する。そして動けなくした上で彼女の性器から蟲の極太の突起物を突っ込む。

この世のものとは思えないほどの激痛を与えられて泣き叫ぶ彼女の絶叫を、携帯電話を通して彼女の父親に届けるという鬼畜ぶりだ。

それまで社長令嬢らしく凛とした振る舞いだった彼女が地獄の苦しみを伴う拷問を受け、父親に助けを求めて人格がぶち壊れたかのように叫び続けるこの場面は声優の迫真の演技も相まって、かなり凄惨な拷問シーンに仕上がっている。

また、余談だがこの作品、視覚的なグロはそれほど激しくない。

キャラクターの生涯を描きたい人へ

本作。物語の最初と最後では実に15年の歳月が経過しており、冒頭では年端もいかない少女だった主人公が、ラストでは30前後になっている。

例えば物語のエピローグで、「――10年後」のようなモノローグを挟んでちょこっとその後のストーリーを付け足すという展開はよくある。しかし本作のように冒頭→５年後→10年後と、15年間を丁寧に描き切るという作品はそこまで多くない。

ではなぜ本作では作中経過時間をここまで多くとったのか。
理由の一つは、間違いなく主人公の成長に主眼を置いているからだろう。

まだ幼い少女だった主人公が、不幸にも蟲使いに捕まって監禁され、体内に蟲を宿された挙句に出産させられる。これだけでも一生物のトラウマで、いずれは自殺するか、生きていても廃人のような人生を送ってもおかしくはない。

しかし本作の主人公は深く傷付きながらもその運命を受け入れ、自らを突け狙う闇の者たちとの戦いに真正面から挑んでいく。

この彼女の姿は確かに心を打つ物があり、往年の名作エロゲーに勝るとも劣らない「人間の強さ」を見せつけてくれる。

いずれライトノベル作家になった皆さんが大長編を書きたいと思った時、本作をプレイしていれば必ずや参考になるだろう。物語を紡ぐことは、人の成長を描くことに他ならないからだ。

デビューに向けた読み切り作を書く際には、本作はあまり参考にならないかもしれない。しかし、作家になったからには末永く活躍したいと思うのが当然だろう。

「EXTRAVAGANZA〜蟲愛でる少女〜」をプレイして、キャラクターの生涯を書いてみよう。

まとめ

いかがだっただろうか。

ちなみに本作が他のエロゲーと大きく異なっている事として、主人公が女性という点が挙げられる。
9割以上のエロゲーの主人公は男で、物語の中で紆余曲折を経てヒロインと結ばれるというのがオーソドックスな展開だ。

本作では、その王道とはまったく異なり、不幸な運命に翻弄された一人の少女が数々の苦難を乗り越えて成長する様を描く。
こんなエロゲーもあるのだということを知る意味でも、一度この作品はプレイしてみるとよい。
あなたの視野が広がるだろう。

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